この記念館は、高潔な実業家として知られる住友2代総理事伊庭貞剛翁(幽翁)を顕彰し、その精神を広範に学んでいただく施設です。

 約100年前の明治時代、伊庭翁は人材の育成に尽力し、住友銀行(現在の三井住友銀行)、住友伸銅場(金属・電工・軽金属の前身)、住友倉庫、別子鉱業所山林課・土木課(林業・建設の前身)など現在の主要な住友各社を設立しました。また、煙害で荒れた四国別子銅山の植林や、製錬所の移転を通じて事業と環境問題の共存を考えた先駆者です。

 現在、住友活機園と呼ばれる本記念館の建物は明治37年(1904年)伊庭翁が引退するにあたり別墅(べっしょ)として建築されたものです。翁は「事業の進歩発達に最も害をするものは、青年の過失ではなくて、老人の跋扈(ばっこ)である」との信念から、僅か4年で総理事の地位を去り、以後、大正15年(1926年)この地で亡くなるまで、禅を愛し、静かな余生を過ごされました。その間、翁の人徳を慕ってこの地を訪れる人が絶えませんでした。また「活機」とは禅宗の思想で“俗世を離れながらも人情の機微に通じる”という意味を持ち、翁が晩年を過ごした地の名称としてふさわしいものです。

 建物は和館と洋館からなり、平成14年(2002年)文化庁より、「明治後期の大邸宅の姿を完全に伝える稀有な例」として重要文化財に指定されました。指定範囲は建物および「一括して景観をなす」とみとめられた庭園を含みます。洋館2階には平成9年展示室が設けられ、住友グループ発展の経緯や伊庭翁の経歴や人柄、建物の概要がパネル・実物資料などで展示されています。
庭園・建物とともに在りし日の伊庭翁を偲ぶことができます。